品貧生活研究所

目標︰アルバイト卒業【1L2CK.YOKOSUKA】(イベント・レンタルスペース)/毎月第三土曜日【贈与喫茶Mr.エレファント】(無料カフェ)/毎月最終土曜日【哲学カフェ横須賀】/【なんでもやっとうと?】(便利屋)⇒「あなたの小銭が必要です」

190531

『ぶんまわし』

依存症体質を気に病み彼は、部屋を出ていった。退室である。次の部屋へ移っただけなのか、それとも、そもそもの大きな回転から、遠心力を持ちいて脱却したのかは、確認の術がない。彼はそうだ、ボール投げの距離が学年で一番だった。彼の投げたボールは誰よりも高く飛んでいた。でもたしか彼は、確認次第に、落ち着いたら連絡するよと、言っていたはずだったのだが、未だに連絡はない。兎に角、何処に居てもいいから、元気でやっていることを祈る。もとい彼は、耐性がなかったのだ。確かにたりない部分が、ひとよりも多かった。あまりにも彼は傷つきやすく、真面目で、いつも真剣だった、そうだから。そうだと言うのも、僕よりもちかくで彼を見ていた人びとよりの証言を参考にしているから、これは、あくまでも「かもしれない」話である。彼は、やさしいから、ひとにものが言えなかった。彼はやさしいから、ひとの話は良く聴いた(自分の意見は挟まずに)。彼はやさしいから、断る術を知らなんだ。彼はやさしいから、ひとのことばに、振り回された。遠くから彼を見ていた僕には、その動きは、あっちへフラり、こっちへフラりとの、フットワークの軽みに見えていた。上手く踊るひとなんだなと。だが、結果的に、結果だけ見ると彼はアヒル野郎だったのだ。何喰わぬ顔で、その内は藻掻いていた。きっと、絶対に、ひと知れず。果たしてその藻掻きを彼は誰かに相談していたのだろうか。Twitterでもブログでも良いのだが、吐いていたのだろうか。まぁ、吐いていなかったのだろう。彼の名を検索しても何も見つからないのだから。勿論、用意周到に痕跡を消して、退出したのかもしれない可能性はある。彼はなんつっても、やさしいひとだったから。彼よりもずっと歳を重ねた今だから分かるが、彼は、「ぶんまわし」がたりなかったのだ。持って生まれたその、強肩を世に活かせば良かったのに。ただ、僕は彼だから、次の部分のみで彼と似ているから分かるが、彼は、彼の「狂犬性」を彼自身が一番に恐れていたのだと思う。彼はやさしすぎて恐いのよ。他者の周りばかりをぐるぐるとして、彼自身をいつも疎かにしていた。遠くからだとよく見える。まぁ、うがった見方だろうが。でもやっぱり、全力で自分のためにだけに、ぶんまわす彼を僕は見たかった。そのために、今の僕なら、「100か0だと、疲れるよ。60くらいで自分にオッケー出さないと。ほら、国家試験も六割で合格じゃない。気楽にやろうよ」と、彼の肩を揉むだろう。きっと彼は「こそばゆい」と、直ぐに身体を離すだろうが。他者に誰よりも寄り添おうとする姿勢を見せていた彼は、そのくせ彼自身が一番に、「ひとに身をまかせる」という、経験と覚悟がたりなかった。残念である。世界禁煙デーのこの火に、この1本は彼のために点け、彼のためだけに揉み消す。