品貧生活研究所

目標︰アルバイト卒業【1L2CK.YOKOSUKA】(イベント・レンタルスペース)/毎月第三土曜日【贈与喫茶Mr.エレファント】(無料カフェ)/毎月最終土曜日【哲学カフェ横須賀】/【なんでもやっとうと?】(便利屋)⇒「あなたの小銭が必要です」

190520

『穴を埋める』

穴が空いていて、それを知ってて、放っておいたら、とんでもないことになってて、でも、そうなるかもしれないことも、知っていたし、だから、狙い通りなのかも知れないが、いざそうなると、右往左往と電話を掛けまくり、悪態をつく。

庭に穴を掘っていて、苗を貰ったから、植えようと思っていて、そうして、そうした。穴を掘ると、ふと、既に以前から在った穴が出てきた。その穴からは、プラスチックが出てくる。前の前の元号の、郵便番号がシンプルだった時代の、文化的・歴史的な、そう、ゴミクズ。ポカリと空いたそのバレーボールくらいの空洞の土は、とても優しい柔らかなものである。表面の15センチメートルの硬く緊張した層とは、全く違う土だ。僕の手もまたプラスチックで覆われている。でも、その柔らかさは繊維を通り抜けて伝わってくる。だから、僕はプラスチックを脱ぎ去り、素手になり穴を、掘る。最初は、いつまでたっても尽きずに出てくるプラスチックに恐怖を覚えた。そしてどんどんと深くなる穴に、光は届かない。恐いのは、もしかしたらだが、プラスチックよりももっと酷いものが出てくるかも知れないこと。それを、素手で触れてしまうことを僕は恐れた。でも、柔らかな土がその恐怖心を拭い去る。Tシャツは、ズボンは、靴はますますその土で、汚れていくことに反して。善良な柔らかさに、もっともっともっと触れたいと僕の手は、穴を掘ることを止めない。もうすぐに、列車に乗らなくてはならないのに。穴を、掘りたいのか、ただ土に触れたいのか、意識と身体が心地良く分離してゆくことを感じる。感じる。その主体が自分という空洞体である、皮肉と矜持。柔らかな土は尽きない。恐ろしい。

もう時間です。

慌ててスマホを鞄に仕舞う。延長も可能だが、何処までも明日への不安はついてくる。だから、もお、降りよう。身支度を整えて、穴に目をやる。深くなった穴は、40分前に比べて存在が大きくなっている。そうだ、駄目だ、このままだと、と慌てて蓋を探す。このままにしておいたら、またとんでもないことになる。善くないものが、穴に入る。

モノボケをするための、芸人のように必死に、30秒探して、火鉢で蓋をした。その火鉢にも穴はあるが、光は届くゆえによく見え、つまり底が知れている。その底が誰かの、穴の蓋になるということへの皮肉を再び感じ、まてまて、それこそが、可能性だろ?と、前を向いて階段を降る。